『自立度を上げる』という支援にようやく気付き取り組み始めています ~思春期の子にはかなり有効~


※自立度を上げる支援(お風呂)での1コマ

我が家の息子はDQ13の最重度知的障害があります。
乳幼児期後半の発達段階で発語はありません。
自閉症尺度CARSのスコアは44と自閉度もまぁまぁ重いです。

そんな我が子への支援の中心は「コミュニケーション」でした。
表出と理解のコミュニケーションがしっかりしていれば、多くのトラブルは回避できるはずと取り組んできました。

でも、思春期にはまた違う視点が必要で、今までになかった角度からの取り組みを始めることになりました。その経緯を書き記しておきます。




目次

1.自閉症の人のトラブルにありがちなこと
 ①左手で母親の髪の毛を鷲掴み&右手でボランティアさんを殴るA君
 ②閉じ込められた車の中で自傷しているB君
 ③これらのトラブル事例から感じること

2.我が家で力を入れてきた支援方法
 ①PECS
 ②スケジュール・カレンダー
 ③交渉

3.我が家であまり力を入れなかった・入れることができなかった支援方法
 ①マカトン・手話
 ②文字

4.これから支援に力を入れていきたい支援方法
 ①ipecs

5.「自立度を上げる」という支援

6.まとめ




1.自閉症の人のトラブルにありがちなこと


①左手で母親の髪の毛を鷲掴み&右手でボランティアさんを殴るA君


◆表出・理解コミュニケーションのトラブル◆

10年ほど前のことですが、今なおありがちな話です。

当時、地域の障害者の会に参加していました。
バスをチャーターしてリクリエーション活動をしていたときの話です。
高速道路のサービスエリアで休憩をしたときに問題が発生しました。

バスにはTV画面が備え付けられていて、DVDを見ることができ、
その日はドラえもんが映っていました。

でも、休憩でエンジンを切るためDVDが消えたのです。
ご機嫌で見ていたA君は烈火のごとく怒り出しました。
(A君は身長180cm体重90kgのがっちりタイプ)

「DVDをつけてください」と表出するために用いている方法が
左手で母親の髪の毛を鷲掴みにして、右手でボランティアさんを殴っているのです。

『暴れることで自分の要求を通そう』としているのです。

機能的なコミュニケーション方法を学んでこなかったから、
毎回、暴れると自分の要求が叶うという経験を積み重ね、『暴れる』ことが強化されてしまった事例です。

あと、この場合、表出の支援だけでなく、理解コミュニケションの支援も必要になります。
「DVDをつけてください」とPECS等々のAAC(注1)で表現できたとしても
バスの休憩時間の15分ほどを待ってもらう必要があり、そのことをA君に分かるように伝える必要があります。

日ごろからの『スケジュール提示』や『タイムタイマーによる見通し』を持てるようにしていると問題回避できた事例だと思います。

注1:AACとは

AAC(Augmentative and Alternative Communication;補助・代替コミュニケーション)とは、「話す・聞く・読む・書く」等々のコミュニケーションに障害のある人が、残存能力(言語・非言語問わず)とテクノロジーを使うことで、自分の意思を相手に伝えること。PECSや筆談などのことです。


②閉じ込められた車の中で自傷しているB君


◆理解コミュニケーションのトラブル◆

こちらの話も10年ほど前の地域の障害者の会での話です。

年末の餅つき大会でボランティアさんも多数参加された盛大な胃ベントがありました。
B君のお母さんはその会で役員をされていたこともあって餅つき大会が終わった後、片付けを手伝っておられました。

その片付けの間、B君は車の中で待たされていました。
(B君は体重100kg越えの巨漢)

たまたま私たち家族がB君の乗っている車のそばを通ったときに
その車が不自然に揺れていることに気付きました。

よく見ると、B君が
親指の付け根にかみつきながら、反対の手で頭を拳で殴りつけ、
上体を大きく揺らしていたのです。

いつまで待てばいいのか分からないから混乱していたのだと思います。

やはりスケジュールやタイムタイマーの支援が必要で、
あと、暇つぶしグッズがあると問題なく過ごせたように思います。

③これらのトラブル事例から感じること


うちの子が思春期で荒れて、どん底に落ちるまでは表出と理解のコミュニケーション支援をしっかりしていれば避けることのできたトラブルで
今の時代だと ちょっとした虐待 と言えるかもしれない・・・

と思っていました。

でも、そんな偉そうなことは言えません(滝汗)
必死でPECSとスケジュールの理解、タイマーの理解を取り組んできましたが
上記の2つの事例と同様の状況が発生したときに、今の息子を大人しく待たせることができるかどうか・・・

自信がありません。

ただ・・・でも・・・確実に言えるのは
自閉症の人のトラブルの多くは、コミュニケーションの意思疎通トラブルが大半だということです。

その問題行動に対して
我慢して耐えることにエネルギーを使うのではなく支援していくことにエネルギーを使っていく
ということを意識してきました。

詳しくは次の項で。



2.我が家で力を入れてきた支援方法


上述したように、トラブルの主たる原因はコミュニケーションにあると感じ、積極的にコミュニケーションする力をつけるべく支援してきました。


①PECS



※PECSマニュアルにアンディー先生・ロリ先生・門先生・今本先生のサインをいただいています(ネグロン先生すいません!)

PECSとは絵カードを用いたコミュニケーション方法で、絵カードをつまむ、渡すというスキルがあればできるAACです。このPECSも用いた自閉症児者への支援方法がピラミッド教育アプローチになります。
個人的には、知的に重い子の場合はPECS一択と言っていいくらいの支援方法に感じています。

息子が小さいときから ただただ息子の気持ちが知りたくて このPECSに取り組んできました。何を求めているのか、どのように感じているのか、なんでもいいから知りたい という思いからでした。


◆ピラミッド教育コンサルタントオブジャパン株式会社のHP

null


◆PECSについて(メーカーHPより抜粋)

PECS(Picture Exchange Communication System:絵カード交換式コミュニケーションシステム)とは、ユニークな拡大/代替コミュニケーション・トレーニング手順であり、コミュニケーションの自発という面に着目する点で世界中に広く認められています。PECSでは、複雑な装置や、高価な教材を必要としません。PECS は、教師や居住施設のケア担当者、家族を念頭に置いて開発されました。ですから、いろいろな場面ですぐに使えます。様々なコミュニケーション障害、認知障害、身体障害の人に役立つコミュニケーション・システムです。絵カード交換式コミュニケーション・システムについての研修は、ピラミッド教育コンサルタント社(Pyramid Educational Consultants)を通じて行なわれています。これは、 アンディ・ボンディとロリ・フロストが率いる世界規模のグループ会社です。オーストラリアのピラミッド社のコンサルタントたちは,Dr.ボンディとMs.フロストの専門知識や技術を維持し,修正が施されるPECS手順をすべて改訂するために,おふたりと緊密にチームを組んで活動しています。


◆ピラミッド教育アプローチイメージ図(マニュアルより引用)




◆PECSのマニュアルはアマゾンでも販売しています



②スケジュール・カレンダー



※小学部高学年のころのスケジュールの様子(ここまで理解できるようになるまでに7,8年)

息子の気持ちを知りたいからPECSに取り組みました。
対して、こちらからのコミュニケーションとして見通しを持てるようにしてあげたくてスケジュールに取り組みました。
自分の「つもり」(見通し)が外れると、混乱してパニックを起こし、よく泣いていた幼児期でしたので必死で取り組みましたが、理解できるようになるまでに7,8年かかりました。


③交渉



※PECSマニュアルより引用

ピラミッド教育の指導方法には時系列に系統立ったものがあり、分かりやすい図があります。
(9つの重要なコミュニケーションスキルとして)

交渉を始める時期は、この図から言うとかなり早い段階から取り組む必要があります。
我が家では遅かったかな・・・(滝汗)

表出(PECS)と理解(スケジュール・カレンダー)の双方向のコミュニケーションの力が付いてくると
交渉に取り組むことができるようになるので、時期を逃さず指導していく必要があります。

ピラミッドジャパン社のフォローアップに参加したときに先生から
『表出と理解のバランスが大切』というお言葉をいただいたこともありました。
(アンバランスになると問題行動につながる と)



3.我が家であまり力を入れなかった・入れることができなかった支援方法


①マカトン・手話


我が家ではほとんど取り組みませんでした。
特にマカトンは手軽に学ぶことができず情報がほとんど得られなかったのでほぼ取り組んでいません。

マカトンも手話もコミュニケーションの見える化という意味では、頑張ればマスターできたかもしれませんが
世の中で理解できる人の数が圧倒的に少ないというのが、我が家では取り組まなかった理由です。

ただ、「ちょうだい」「おしまい」「トイレ」の3つだけはマスターしました。


②文字




ひらがなのお勉強ができる知育玩具や、お風呂に貼るひらがな表などを導入しましたが
まったく興味を示してくれず、ダメでした。

先輩ママさんの話を聞いていると・・・
興味さえ示してくれれば、マスターできる可能性はあり、マスターしてくれれば筆談することもできるようになりますからコミュニケーションの幅が広がるとトライしてきたのですが、結果は「残念」でした。



4.これから支援に力を入れていきたい支援方法


ipecs


PECS IV+ App-Demo

ipadにPECS IV+ AppをインストールすることでPECSブックがタブレットに入った状態になります。
我が家では、ipadもアプリも購入していますが現状ではまだ・・・というレベルです。
カードづくりが便利になったり、カードが増えてもかさばらないなどなどのメリットの多いipecsです。

導入したとしても、まずはアナログPECSとの併用となるように思います。



5.「自立度を上げる」という支援


上述したように、コミュニケーション支援に力を入れて、表出・理解をバランスよく身に着けてもらい、それらの力を使いながら交渉していくことで円滑な生活を実現させるという目標で頑張ってきました。

が・・・

そうは問屋が卸さなくなってきたのです。
思春期ですから当然(?)のこと なのか???

上手くいかなかったのは私の勉強不足でした。
コミュニケーション支援も大切ですが、思春期ならではの問題をクリアにする必要がありました。

それが『自立度を上げる』という支援です。

自分自身が中学生のころ、親とかかわりを持ちたかったかというと・・・
親には申し訳ないのですが、ぶっちゃけ「うっとおしかった」です。

「知的に重く支援が必要」ということで過保護になっていました。
自分でできることは自分でやってもらう という基本ができていなかったように思います。

具体的には、お風呂支援。
小学部のころからずっと1人でできるように支援してきていましたが「思春期までに」という危機感はなく、「そのうちできるようになればいいだろう」という甘いものでした。
我が家の中で一番、親の介入の多いものになっていました。
少し言い訳になりますが、思春期に入ってから・・・

思春期という落とし穴 ~穏やかだった子があっという間に暴力的になってしまった その顛末を書き記しておきます~

こちらの記事で紹介した どん底 の状態時には、『プロンプトの出たものは全て覚えていて同じ状況下では必ず指示を待つ』というこだわりが出てきて苦労していました。

そのこだわりの被害が大きかったのがお風呂でした。
「自分からは決して動かないというこだわり」
「親の手を借りたくないという自立心」

という2つの相反する思いの中で日々ストレスを貯めることとなりました。

そんな中、「そのうちできるようになればいいだろう」とのんびり支援してきていたことと相まって、毎日お風呂ではイライラが爆発するようになり、コミュニケーション支援とは別にお風呂支援としてしっかりと支援しなおす必要があると大々的に入浴方法にメスを入れようとしていたところでした。

そんな折、すっかり荒れ荒れになった息子のために支援者さんたちが集まって対策を検討してくださる支援会議があり、その後「自立度を上げる」というアドバイスを受け、ちょうど本気で取り組み始めたお風呂支援で自立度を上げていこうとなりました。



6.まとめ


「自立度を上げる」という支援は、息子の場合確実に効果のあるものでした。
親にかかわられたくないという強い思いがあるけれど、自分1人でできないから親を巻き込まざるを得ず、結果イライラしてしまうことの悪循環があったわけです。

いくつかの取り組みを同時並行で取り組みましたが、一番効果があると感じたのがお風呂支援で自立度が上がっていくとお風呂での笑顔が増え親への暴力も減っていきました。好循環の始まりです。

ただお風呂支援もまだまだ道半ばです。その右往左往ぶりも交えつつ、実際の自立度を上げる支援として記事を次回書き記したいと思っています。
ちなみに、お風呂支援に本腰を入れだしたのは今年初めからで現時点で4か月ということろです。完全に自立するにはまだまだだと感じています。ひょっとしたらできないかも・・・なんてくじけそうになりながら取り組んでいっています。コツコツ1つずつ自分でできるように支援していっていますので時間がかかるのは仕方りませんが当初よりも自分でできることが増えてくることでイライラが大きく改善している様子をみると、私のモチベーションも上がり奮闘中です。

乞うご期待!



0 件のコメント :

コメントを投稿