TEACCHコラボレーションセミナー2018を受講してきました!



とても中身の濃い2日間でした!

アメリカの TEACCH Autism Program エグゼクティブ ディレクター のローラ・クリンガー博士による
就労に向けた最新のお話を統計的データをもとにお話ししてくださいました。

現在、思春期ど真ん中で目の前の問題行動への対処だけで一杯一杯ではありますが
あっという間に社会へ出る日がやってくると思っていて、
就労に向けて、何が必要なのか、どうすれば有意義な社会人人生を送ることができるのか
なにかヒントとなるものはないか、そんな思いで拝聴してきました。





目次

1.初日のお題目

2.2日目のお題目

3.ローラ・クリンガー博士のお話
3.1 午前の部
3.2 午後の部

4.日本のスペシャリスト4人の事例発表
4.1 TTAPを活用した自閉症スペクトラム成人への就労移行支援
4.2 診断のない発達特性のある成人男性への支援
4.3 家族を亡くした利用者を支える
4.4 行動障害のある方が快適に過ごせる施設づくり




1.初日のお題目




成人期の支援、移行期の支援を中心にお話くださいました。



2.2日目のお題目




日本で素晴らしい支援をされている方々のお話が4つ。
笑いあり、涙ありのお話であっという間でした。



3.ローラ・クリンガー博士のお話






3.1 午前の部


上の写真はレジュメの一部ですが、統計的なデータを多数提示してくださることで、とても説得力のあるお話でした。
追跡調査しているASDの方の年齢層もかなり年配の方も増えてきたことで得られる貴重な情報で予後の様子を想像しやすいものでした。

最近、どこの勉強会に行ってもよく耳にするのが『日常生活スキル』という言葉です。
やはり、クリンガー先生もこのスキルが大事だとお話されていました。
このスキルのある子と無い子では終了につながる率が大きく違うということ。

悲しい話ですが、親無き後のプランのない方が多いのが現実で、
日本よりも10年以上進んでいると言われているアメリカですら・・・そんな状況・・・


3.2 午後の部





午後からは移行期の青年~若年成人への支援について(具体的な年齢は16~21歳)、
TEACCHでの最新の取り組みである『T-STEP』と『Project SEARCH』のお話でした。

この中でやはり一番衝撃的な現実は、
高校卒業後の自宅への「引きこもり率」でした。

知的に遅れのある子よりも遅れのない子が10倍もの確率 なのだそうです。

この問題は、先ほど記述した『日常生活スキル』とIQの乖離が大きいからのようで
生きづらさを 感じてきた 感じている 感じていくであろう 人々のすそ野の広さを感じざるを得ません。

実際わが家の次男の場合も、今回のお話につながる予感もあり
日々の「勉強しろ!」という対応から、「勉強は2の次で様々な経験を積ませよう」というふうに考えが変わりました。

生きていくうえで大事なスキルの獲得をまず第一に考えねば と思うようになりました。


スポンサーリンク





4.日本のスペシャリスト4人のお話


4.1 TTAPを活用した自閉症スペクトラム成人への就労移行支援


実は、お話の前半に私がバタバタとしてて、しっかり聞くことができず・・・(汗汗汗 苦笑)
とても専門用語が多く、非常に勉強をしておられる支援者さんであることは伝わってきました。
評価→課題対策→実習→評価→就労 という取り組みを丁寧にされていた実践発表でした。

クリンガー先生からのコメント

・強みを見つけてJOBマッチング
・高校在学中のTTAPが理想
・TTAPがあるからTEACCHプログラムは就労率が高い
(スキルレベルを把握し、何を補う必要があるかをつかむことができるから)


質疑応答の中から

・TTAPの実施時期について
高校3年生では遅い
アメリカでもTTAPを広め中で縦割り行政が弊害となっている 
アメリカで16歳という指針が出て変化中(この1年での動き)

・実際に取り組んでいる学校について
東京都で実験的に取り組んでいる支援学校がある 外部専門先生にアセスメント
神奈川の学校でもインフォーマルアセスメントで取り組み中
佐賀県の事業で16歳でTTAPをとり、その結果を家庭・学校で共有し就労に生かしている(土日のプログラム) 




4.2 診断のない発達特性のある成人男性への支援


とても魅力的なお話展開の上手な臨床心理士の先生でした。
このお話を聞いていて、去年の7月のTEACCHプログラム研究会京都支部7月例会の内容とかぶりました。
このときのお話は大学の障害学生支援室の先生のお話で、

・診断の付いている/付いていない
・本人が支援を求めている/求めていない

という4つの分け方で、ご本人さんの納得というキーワードで丁寧な支援をされているお話でした。

今回の事例の方は診断はないものの、支援を求めてこられ、
ご本人さんの意思決定を大事にアドバイスされてきたお話でした。
以前お聞きしたお話と通ずるお話でした。

クリンガー先生のコメント

・自己決定したいけれど、やってみると上手くいかない という人が多い
→こういう人のために開発したTTAP

・グループ介入(TーSTEP)による同年代の仲間からの言葉が
行動変容につながりやすい

・だれもが「自分のことは自分で決めたい」と思っている(思春期以降)

・自己理解の促し方(2つ)
①目標設定
自分の目指すゴールのために必要なことを自分で考える(周囲は言わない)
②自己アセスメント
スコアの出るもの 数値化して支援が必要であることを客観視

・大事なこと3つ
①支援を求めるスキル
②コーピングスキル(ストレス対処法)
③雇い主からのダメ出しを受け入れることができるように

・支援を求めるスキルについて
「手助けが必要です、助けてください。」という台本形式
台本形式がダメな場合は(プライドなど)
いつ・だれに・どういう方法で ← 自分で考えるルーチンにする


質疑応答の中から

・うつ症状について
感情メーターの一定ラインを超えたら「支援者に電話&仕事を休む」取決めあり

・未診断について
支援センターに相談にくる方の半数は未診断




4.3 家族を亡くした利用者を支える


もう、このタイトルを見ただけで涙腺崩壊です(涙涙涙)
自分が死んだ後の家族のことを考えてしまい、涙なしで聞くことのできないお話でした。
利用者のことを親身に考えてくれる支援者さんをしっかりと見つけておかねばと強く感じました。

クリンガー先生のコメント
・家族支援も大事
家族との協同は子供~成人期までずっと続く

・発達段階に応じたテクニック
例)簡素化したソーシャルストーリーを利用

・視覚的に伝える
本人の最も調子の悪い時点を想定した視覚支援が必要

・日々の支援でのかかわりがあったからこその成功事例


質疑応答の中から

・緊急時の備え
「死」の前に関係者が事前協議
みんなでチームとして相談および決定

・疲れていることをどう理解してもらう?
スケジュールに水分補給・トイレ・休憩を入れる

・体調不良について
高機能の方の中には
①仕事に行くことができるがしんどいというレベル
②病院に行く必要があるレベル
③寝込んでしまうレベル
この差を区別できない人がいる


門先生のコメント

・本人の意思確認はどのようにしたか?
日ごろの支援の経験から未経験のことには「行かない」を選択するので
最終的には周囲(チーム)での判断だった。
「これが本人のためだろう」と支援者は思い込みがち(自戒)
本人が参列したくなくなることも想定して準備


門先生のコメントに関しては、
当事者の方の気持ちを汲み取る最大限の努力をする必要があり
決してないがしろにしてはいけないポイントだと思います。

今回のケースでは知的にかなり重く、また家族を失うという経験はそうそう体験できるものでもなく
意思疎通の可能な範囲でご本人さんの気持ちを理解しようとすることが大事なのだと感じました。

これからの時代、障害が重くても、
この配慮が当たり前のように行われる社会になってほしいと切に願います。



4.4 行動障害のある方が快適に過ごせる施設づくり


支援に直接かかわる話ではなく、行動障害のある方に過ごしてもらう施設づくり、
建築するにあたってどのようにしていくかという設計段階からかかわって作ったというお話でした。
特に独創的に感じたのが回廊型の廊下でした。

1人1人の利用者さん、スタッフの配置等々、綿密に計画されドンピシャの建物を造られたお話で
設計事務所の方からは 「本当にこれでいいんですか?」 というリアクションが多かったそうです。
ですが、出来上がり、利用者さんの様子から正解だったというものでした。

建物だけでなく、スタッフの配置や教育、スタッフ間コミュニケーションなどなど
とても素晴らしいチームの様子がうかがえるご発表でした。

クリンガー先生のコメント

・スタッフへのトレーニング・人材開発はとても大事だ

・TEACCHの居住プログラムの成功の秘密はスタッフだ

・スタッフの効率的な配置・ローテーション・引継ぎが大事
→スタッフの「燃えつき」に要注意

・これからはTEACCHとABAをいかに統合するかという時代

・建築構想で問題行動を減らす
→「環境を整える」というまさに「先行事象」だ

・利用者さんに対して見事に「ABC分析と氷山モデル」を使っている


質疑応答の中から

・スタッフ配置の工夫
支援の難しさでグループ化
イージーなところから難易度の高いグループへの配置換え
※一番難しいグループを担当するには最低1年は必要

・スタッフのスイッチタイミング
ケースバイケースで柔軟に対応

ここに文章



腹巻先生のコメント

以前、同様の悩みから建物に関して調べたことがあり
その時点で世界最高峰と言われた建物を見学に行ったときに
今回の事例と同じ回廊型の廊下を採用した建物だったと。


↑ 突き詰めて考えると行きつくところは同じ なんですね。素晴らしい建物!




0 件のコメント :

コメントを投稿